http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2016/m03/r0329.htm

 集団的自衛権行使に道を開き、自衛隊の活動を大幅に広げる安全保障関連法が29日、施行された。戦後日本の安全保障政策を変容させる法が運用段階に入る。
 法成立から半年がたつ。この間、世界の安全保障環境は大きく揺れ動いた。
 北朝鮮は1月早々から、核実験とミサイル発射を行った。その後も米韓の合同軍事演習に対抗して挑発的行動をエスカレートさせている。
 ヨーロッパでは昨年11月のパリに続き、3月にはベルギーでも多くの市民を巻き込んだテロが起きた。犯行声明を出した過激派「イスラム国」(IS)は、世界各地でテロを引き起こしている。
 多くの日本人も危険が身近に迫っていると感じざるを得ない。だからといって、ことさら脅威をあおるだけでは判断を誤る。
 国民が知りたいのは、安保法の下で展開されようとしている新たな活動がいかに有効に働き、抑止力を高めるのかという点だ。現政権はそれを日米同盟関係の強化に求めるが、今のところその効果ははっきり見えない。
 むしろ、日米の一体化が進んで米軍の軍事行動に巻き込まる恐れはないか、日本がテロの標的になることはないかという不安が国民の中にあることは否定できない。
 3月下旬、共同通信社が行った世論調査では、安保法を「評価しない」が50%に上った一方で、「評価する」は39%にとどまった。国民の理解は進んでいないとみるべきだろう。
 この法には広範な反対運動が起きている。歴代政権が禁じてきた集団的自衛権の行使容認には、多くの憲法学者が「違憲」の見解を示した。
 今国会には野党5党が廃止法案を提出したが、安倍晋三首相は「廃止されれば、国民を守るために強化された日米同盟の絆は大きく損なわれる」と反論。自民党大会で敵意をむき出しにした。
 法の施行で、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊による「駆け付け警護」や、他国軍と共同で行う宿営地防衛などが可能になるが、現政権は新たな任務の指示は秋以降とする方針だ。
 参院選への影響を避けるため、「危険」を伴いかねない活動の説明を控えるのは党利優先としかみえない。これでは不誠実だ。
 違憲の疑い。運用上の「政府の裁量」への不安。法をめぐる疑問は解消していない。あらためて議論すべき問題が山積している。
 国の根幹でもある安全保障政策が、国民の理解と支持が不十分なままに展開されようとしていることこそ、民主国家の足元を危うくするものではないか。