http://www.iwate-np.co.jp/ronsetu/y2015/m11/r1130.htm

 同性を好きになったり、心と体の性が一致しない性同一性障害などの性的少数者は、長らく偏見の対象となってきた。「性別は男女しかなく、結婚は男女がするもの」との通念が根強いためだ。
 偏見が差別、孤立を生み、時に絶望的心理へ追い込む。同性愛男性の自殺未遂率は異性愛男性の約6倍だ(日高庸晴・宝塚大教授ら調査)。
 だが、当事者が自ら声を上げ続けてきたことで、少しずつ「性の多様性」を尊重する社会になってきた。東京都渋谷区は今月から、同性のカップルを結婚に相当する「パートナーシップ」と認める証明書の交付を始めた。
 性的少数者が生きやすい社会とは、全ての人が尊重される社会でもあるはずだ。当事者の声に耳を傾けることから、心の壁を取り払いたい。
 多様性が尊重される社会を、どのように実現していけばいいのか。同性愛を告白し、本県などで理解を呼び掛ける活動をしている内海章友さん(性と人権ネットワークESTO副代表)が東日本大震災直後、避難所で経験した出来事は示唆に富む。
 内海さんは仙台市内で被災し、石巻市在住の両親を探しに向かうが津波に阻まれた。「神も仏もない」。絶望の中、避難所になった小学校の教室に転がり込んだ。
 「私は皆さんの憂さ晴らしになればと思って、教室の一人一人の話をひたすら傾聴しました。すると、すごいことが起こったんです。みんなが互いの苦しさを理解し合い、トイレ当番など役割も担うようになったのです」
 一方、他の教室では男性同士が言い争うなど混乱が生じていた。この違いは何か。一人一人の尊重に始まる人間関係づくりが、相互扶助の心を呼び起こしたと言えよう。
 むろん、共生社会実現の道のりは険しい。性同一性障害の人たちは今、マイナンバー制度に不安を募らせている。
 雇用主の求めに応じ、性別が記載されたカードを提示しなければならないが、戸籍と違う性を申告して働いている人は多い。戸籍上の性別を変更できる性同一性障害特例法が2004年に施行されたものの、その要件は厳しい。
 民間団体の調査には「性別がばれるので退職する」「自殺以外に選択肢はない」など悲痛な声が多く寄せられた。
 自殺対策基本法に基づく総合対策大綱は、性的少数者を自殺ハイリスク層として「理解促進の推進」を掲げる。国は率先して当事者の窮状を理解し、制度を改善すべきだ。
 内海さんは後日、両親と再会。古里を失い、東京都内で避難生活を続ける。「社会にはいろんな人がいる。それだけは分かってほしい」との切なる思いを受け止めたい。