臨時国会がきのう開幕した。
安倍晋三首相は所信表明演説で「地方の豊かな個性を生かす」「女性に活躍の舞台を用意する」として、地方創生と女性の活躍を今国会の2大テーマに位置づけた。
問われるのは政策の中身である。強い意気込みの割には具体策が伴っていない。
与野党の対決構図や霞が関の官僚の論理で動くのではなく、地方の実情や国民生活に目を向けて、的確な政策を打ち出してほしい。
演説で首相は根室産サンマをベトナムに輸出する地元の取り組みを紹介した。「地方もオープンな世界へ目を向けるべき時だ」として、環太平洋連携協定(TPP)などの経済連携推進を訴えた。
根室の努力はたたえたい。だが首相はこれを自らの政策を正当化する手段に使っていないか。
ほかにも全国各地の例を取り上げたが、順調な地方自治体は多くはない。大半は地域経済の低迷や人口減少、高齢化など、さまざまな制約に悩まされている。
地方には自由度の高い交付金を望む声が強いが、安倍政権は「ばらまきになる」として否定的だ。中央省庁が地方の事業を「査定」する発想は変わっていない。
民主党政権が取り組んだ国の出先機関の地方移管も進まない。カネと権限の両方で足かせをはめながら、地方に個性発揮を求めるのは身勝手というものだ。
来年の統一地方選をにらんでの地方重視だろう。だが福島県の汚染土を保管する中間貯蔵施設建設や沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題から見えるのは、地元に負担ばかり強いる安倍政権の姿だ。
女性の活躍でも、米国のヒラリー・クリントン前国務長官との会談を自賛するなどパフォーマンスが先行する。上場企業に女性役員数の情報公開を義務づけると述べたが、いかにも上から目線だ。
待機児童の解消や夫が育児参加できる環境づくりなどで、着実に実績を積み重ねることが大事だ。
消費税再増税の判断や集団的自衛権の行使容認に関する法整備、原発再稼働などには深入りを避けた。「地方」や「女性」で目先を変え、国民生活に関わる重要政策から逃げてはならない。
外交政策も説明不足だ。北朝鮮による拉致被害者帰国の見通しは不透明さを増している。中国、韓国との関係改善も、首相が歴史認識などの政治姿勢を変えない中でどこまで進むか見えてこない。
国会論戦ではこうした政策の方向性を明示してもらいたい。
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