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八角理事長を蹴落としたい貴乃花親方(C)日刊ゲンダイ
タイミングを計ったとしか思えない。
日本相撲協会の理事候補選を翌日に控えた28日、週刊誌とスポーツ紙が同時に貴乃花親方(43=元横綱)が八角理事長(52=元横綱北勝海)に反旗を翻しているという趣旨の記事を掲載した。
「八角理事長の狡猾なやり口に怒った貴乃花理事」(週刊新潮)、「貴猛反発」(スポーツニッポン)がそれだ。
ともに八角体制への批判で、問題にしている点は主に2つ。ひとつは昨年12月18日の理事会で八角理事長が就任した過程に正当性がないというもの。もうひとつは理事候補選に出馬するため評議員を退任した山響親方(45=元幕内厳雄)の後任に関し、八角理事長は正式な手続きを踏まず、自分と同じ一門のOBをねじ込もうとしたというものだ。
まずは、ひとつめの理事長を決める過程に関しての指摘だ。「尾車親方が、“今、代行を務めている八角さんにしましょう”と言い出し、周囲が口を出す間もなく、“いいですか、いいですね”という具合に先に進めてしまった」「最大の問題は、“誰を理事長にするか”という議題について表決を行っていないこと」(週刊新潮)。「(八角理事長就任は)満場一致ではなかった」(スポーツニッポン)。要するに八角理事長が正式な手続きを踏まず、強引に理事長に就任したというのだが、ある親方がこう反論する。
「尾車親方(58=元大関琴風)が勝手に理事会を引っ張ったような印象を受けますが、明らかに事実と違う。尾車親方が他の理事に八角さんでいいかと水を向けた後、最終的に神山敏夫監事(74=公認会計士)が『みなさん、よろしいですか?』と、はっきり念押ししています。神山監事は裏金疑惑で真っ黒な顧問とともに、貴乃花理事を次期理事長に担ごうとしている人物です。貴乃花理事らが反対する余地があったにもかかわらず、貴乃花理事はもちろん、他の理事からも反対の声は一切、上がらなかった。八角さんの理事長就任は明らかに満場一致でした」
八角理事長自身もこの日、「ちゃんと書いて欲しいよね。(自分が理事長に就任したのは)全会一致だよ」と発言。理事会で最後に念押ししたのが神山監事だったことを明らかにした上で、「わたし以外に名前は出なかった」とコメント。貴乃花理事からも反対の声は上がらなかったのかという問いには「ありませんでした」と明言した。
「尾車親方(58=元大関琴風)が勝手に理事会を引っ張ったような印象を受けますが、明らかに事実と違う。尾車親方が他の理事に八角さんでいいかと水を向けた後、最終的に神山敏夫監事(74=公認会計士)が『みなさん、よろしいですか?』と、はっきり念押ししています。神山監事は裏金疑惑で真っ黒な顧問とともに、貴乃花理事を次期理事長に担ごうとしている人物です。貴乃花理事らが反対する余地があったにもかかわらず、貴乃花理事はもちろん、他の理事からも反対の声は一切、上がらなかった。八角さんの理事長就任は明らかに満場一致でした」
八角理事長自身もこの日、「ちゃんと書いて欲しいよね。(自分が理事長に就任したのは)全会一致だよ」と発言。理事会で最後に念押ししたのが神山監事だったことを明らかにした上で、「わたし以外に名前は出なかった」とコメント。貴乃花理事からも反対の声は上がらなかったのかという問いには「ありませんでした」と明言した。
年寄会の「議題にも上らなかった」と言うこの親方は、「記事は貴乃花一派のリークでしょう」とこう続ける。
「次期理事長の座を狙う貴乃花理事と、彼を支持する山響親方、貴乃花理事に寄生して甘い汁を吸い続けたい裏金顧問、裏金顧問とタッグを組む神山監事、宗像紀夫(74=元名古屋高検検事長)、徳川康久(67=靖国神社宮司)の両理事らは、いまの八角体制を快く思っていない。けれども理事候補選に出馬する理事のほとんどは八角理事長を支持していて、旗色が悪い。理事候補選を前に現体制にダメージを与えようという彼らの情報操作ですよ。中でも彼らを牛耳る裏金顧問はやたらと悪知恵が回るし、メディアとも太いパイプがありますから」
だとすれば件のマスコミは、裏金顧問率いる貴乃花理事一派のお先棒を担いだことになる。長年、相撲担当記者を務めた評論家の中澤潔氏は「貴乃花はスポニチの専属評論家。スポニチが応援したいのはわかりますが……」と、こう続ける。
「私も新聞記者だったので、『新聞を売りたい』という気持ちはわかります。しかし、自分の評論家をあまりに持ち上げるのは我田引水、公正な報道という意味では失格です。露骨で見え透いたやり方。やり過ぎといってもいい。相撲界はこのような報道の仕方が、昔から習慣的にあった。もしかすると、この日の記事は貴乃花側がリークしたのかもしれない。私などは相撲協会の事情を知っているからまだいいですが、裏を知らない読者は信じてしまいますよ」
作家の麻生千晶氏もこうしたメディアの報道姿勢に異を唱える。
「相撲に限らず、最近ではSMAPの(解散騒動の)報じ方もそうです。公平性をねじ曲げて、自分たちの利害関係のある方向に記事をもっていくことはスポーツ、芸能によくあります。私も記事を読んでいて、そのおかしさに気づくことがあります。今回の週刊新潮を見た時は、『悪意に満ちた見出しだなあ』と思いました。本来、メディアは自分の目で座標軸をしっかり定めなければいけません。それを失ってしまえば、マスメディアとは呼べません。ただのぶら下がり記者でしょう」
取材対象と手を組み、一方的な報道を垂れ流す。これを癒着と呼ばずして、何と言うのか。貴乃花一派の悪巧みに利用されるメディアはもちろん、裏金顧問らの悪行を見て見ぬふりの他のマスコミも言語道断だ。