防衛省が2014年度予算の概算要求を決めた。
前年度当初比2・9%増となった。11年ぶりに増額に転じた13年度の0・8%増を上回る伸びだ。
安倍晋三首相の防衛重視姿勢を反映したとみられるが、厳しい財政状況を考えれば疑問を禁じ得ない。
要求項目は政府が年末に策定する新防衛大綱を先取りしたものが多い。専守防衛の原則からの逸脱や、周辺国との緊張を高めることが懸念される項目がずらりと並んでいる。
無原則な拡張路線は認められない。本当に必要な能力は何かを精査した上で、コンパクトかつ効率的な予算運用を目指すべきだ。
防衛省が先月まとめた新防衛大綱の中間報告では、離島奪還のための海兵隊能力確保や、高高度滞空型無人機の導入を明記した。その是非論を置き去りにしたまま、概算要求には関連予算が盛り込まれた。
離島攻撃に対応するため陸上自衛隊に「水陸両用準備隊」を新設するという。水陸両用車の購入や訓練強化のための予算も要求しているが、備えが過剰になれば周辺国との対立をエスカレートさせる懸念がある。
離島への展開力向上を目指す新型輸送機MV22オスプレイは15年度の導入を念頭に置く。米軍が沖縄に配備したが、安全性が疑問視され、地元で反対運動が続いている機種だ。拙速な判断と言わざるを得ない。
高高度滞空型無人機は旅客機よりも上空を飛行し、広範囲に警戒監視を行う能力がある。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の海空の活動に対応する狙いだ。能力を競い合うことで地域の緊張を高めかねない。
敵基地攻撃能力に直結する予算の要求は避けた。だが4機購入を見込む次期戦闘機F35はステルス性能が高く、高高度滞空型無人機と並んで、敵基地攻撃と関連性が高い。専守防衛の原則を忘れてはならない。
F35の製造に国内企業が参画するための費用も計上した。政府は武器輸出三原則の例外としているが、国際紛争を助長する結果を招くことも考えられ、注意が必要だ。
気になるのは尖閣諸島周辺などをめぐる周辺国との緊張を理由に、防衛力をなし崩し的に拡大させようとする意図が見られることだ。
力に力で対抗するのではなく、外交を駆使して問題解決を図るのが基本である。周辺国との関係改善に何ら成果を得られないまま、防衛力を増強して事態に対処しようとする首相の姿勢は安易で無責任だ。
社会保障費を削るなど国民生活を圧迫して防衛費だけが突出するのでは納得を得られない。防衛省の組織改革や調達の効率化を進めるなど、歳出を抑え込む努力が欠かせない。