コロナ禍で財政は危機の度合いを強めている。それを認めないのは国民を欺くに等しい。
内閣府は新たな中長期の経済財政試算をまとめた。
財政健全化の指標となる国と地方の基礎的財政収支(PB)は2027年度に黒字化すると見込んだ。税収の上振れを受け、1月の前回試算から2年前倒しした。
PB黒字化の目標時期である25年度には2兆9千億円の赤字が残るものの、歳出抑制の努力を続ければ25年度に黒字転換できるとの見通しも示した。
しかし、言葉通りに受け止めるわけにはいかない。バブル期並みの高成長が続き、税収が増えていくという非現実的な前提に試算は基づいているからだ。
政府は空疎なシナリオを捨て、実態に即した財政再建への道筋を急ぎ示す必要がある。
新試算は、名目経済成長率が21~27年度の平均で3・3%になると仮定している。民間や国際機関の予測に比べて高い数字だ。
そもそも、名目成長率が3%を超えたのは過去四半世紀で1回しかない。この事実を直視せずに楽観論を振りまくのは無責任だ。
22年度以降の税収について、前回試算より1兆5千億~2兆円多く見込んでいるのも解せない。
20年度税収が上振れして過去最大になったことを受け、「算定の土台」を高くしたという。
想定より3兆円余り増えた法人税収を考慮したのだろう。だがそのけん引役となった輸出型企業などの好調が続く保証はない。
試算が抱える根本的な欠陥は、将来の歳出に関して補正予算を前提としていないことだ。
現実には、政府は毎年のように大型補正を組んで歳出を膨らませてきた。20年度の場合、当初予算で102兆円だった一般会計歳出は175兆円まで増え、PB赤字比率の急上昇を招いた。
コロナの収束や経済弱者の救済に政府が思い切った支出をするのは当然だ。だが、それによる財政悪化を織り込まない試算にどれほど意味があるのだろう。
政府に求められるのは、不要不急の事業をあぶり出し、歳出見直しの努力を行うことだ。
格差が広がる現状を踏まえれば、巨利を稼ぐ大企業や富裕層に応分の負担を求める課税強化も検討しなければなるまい。
危機であるからこそ財政の先行きを冷徹に見極め、歳入・歳出両面の改革を促す。これが財政試算のあるべき姿ではないか。
コメント