帰国させられるのを恐れて、妊娠したことを誰にも言えないまま自室で双子を産んだ。死産だった。それぞれの名前と弔いの言葉を書いた紙を遺体に添えて、タオルを敷いた段ボール箱に入れ、棚に置いた―。
熊本の農園で働いていたベトナムからの技能実習生が、死体遺棄の罪に問われた事件である。熊本地裁が、懲役8月、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。
妊娠、出産を隠すために遺体を放置したとする検察側に対し、被告側は一時的に安置しただけだとして無罪を訴えていた。判決は、一人で思い詰めた経緯や実習生が置かれた状況を酌みつつ、遺棄に当たると認定した。
被告の行為はそもそも罪に問われるべきなのか。根本的な疑問がある。遺体をどこかに捨てたのでも、押し入れや床下に隠したわけでもない。逃げてもいない。
出産した日は「体がきつく、どうしていいか分からなかった」と語っている。翌日、雇用主が診察を受けさせて出産が発覚し、病院が警察に通報したという。
技能実習生の支援に携わる弁護士の連絡会は、地裁判決に抗議する声明を出した。実習生が置かれた状況を無視し、刑法の解釈上も遺棄行為を無限定に拡大するものだと批判している。
被告は、実習生を受け入れている監理団体から、妊娠しないよう厳しく言われていたという。何より目を向けるべきはその点だ。
女性が妊娠し、出産することは、誰にも等しく認められ、保護されるべき権利である。外国人の実習生だからと制限されていいはずはない。男女雇用機会均等法は実習生にも適用され、妊娠や出産を理由にした不利益な扱いは禁止されている。労働基準法に基づいて産休も取得できる。
ところが現実には、監理団体や雇用主が恋愛や妊娠を禁じ、妊娠が分かると帰国させることが横行している。政府は、不利益な扱いや私生活の不当な制限をしないよう注意喚起しているが、歯止めになっていない。
実習生の多くは、母国の送り出し機関に高額な手数料を払い、借金を背負って来日する。その弱い立場につけ込み、人権がないがしろにされている実態がある。
実習生が赤ちゃんを遺棄する事件は各地で相次ぐ。そこにも技能実習制度の構造的なゆがみが映し出されている。外国人労働者を受け入れる仕組みを根本から検討し直す必要がある。人権侵害がはびこる実習制度は廃止すべきだ。
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