https://www.hokkaido-np.co.jp/article/502003?rct=c_editorial

 新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象が11都府県に広がり、日本経済が二番底に向かう懸念が強まっている。

 営業時間短縮を要請される飲食店だけでなく、外出自粛による需要減などが幅広い業種に及ぶ。

 コロナに関連する解雇や雇い止めは8万人を超え、中小企業や個人事業主の多くはぎりぎりの経営を続けている。宣言の再発令が倒産や廃業、失業の増加に拍車をかけることがあってはならない。

 感染抑止策の実効性を高めるためにも、国民や事業者が不安なく協力できる支援策が欠かせない。とりわけ宣言発令の影響が真っ先に及ぶ弱者への目配りが肝要だ。

 だが昨年末に決定した本年度第3次補正予算案は宣言の再発令を想定していない。感染収束を前提に「Go To」事業や脱炭素化、国土強靱(きょうじん)化に財源を多く割き、感染対策や生活支援は限られる。

 中身を精査し、緊急性の低い予算は逼迫(ひっぱく)する医療の下支えや困窮者救済に回すこともためらうべきではない。きょう召集の通常国会で十分な議論が求められる。

 政府は時短に応じた飲食店への協力金の上限を1日6万円に増額した。ただ従業員が多く、十分ではない店もあろう。事業規模などに応じた仕組みをつくるべきだ。

 支援が必要なのは飲食店だけではない。なのに政府は、売り上げが急減した事業者を業種不問で支援する持続化給付金や、家賃支援給付金の申請を来月に締め切り、新たな給付金を設けるという。

 時短要請に応じた飲食店と直接・間接の取引がある全国の中小企業や個人事業主のほか、宣言に伴う外出自粛で影響を受ける事業者も対象に含める方向だ。

 それでも持続化給付金に比べ対象は限られ、支給額も最大40万円と少ない。開始時期も見通せない。

 これでは宣言発令中に支援を縮小するのも同然だ。早急に再検討し、苦しむ事業者を幅広く、切れ目なく救う制度にする必要がある。

 道内も感染拡大が止まらず、飲食を中心に経済状況は厳しい。さらに大消費地を対象に宣言が発令され、飲食店が時短となることで道産品の出荷にも打撃となる。

 政府は1次産業や卸、食品製造などを支えつつ、農畜産物の需給動向にも目を配ってもらいたい。

 解雇を防ぐため休業手当を国が補う雇用調整助成金の特例措置も来月末で切れるが、延長が当然だ。

 感染拡大が予想された冬場に各種支援終了を決めていた菅政権の判断の甘さが厳しく問われよう。