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 菅義偉首相は13日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部を官邸で開き、新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言を栃木、愛知、岐阜、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県に追加で再発令した。記者会見の詳報は次の通り。


 【冒頭発言】

◆宣言、厳しい状況を好転させるための「欠かせない措置」

 新型コロナ対策本部を開催し、緊急事態宣言の対象に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加することを決定した。期間は2月7日まで。1都3県に続き、他の地域でも厳しい状況が続いている。皆さんも不安に感じていると思う。この厳しい状況を好転させるためには、欠かせない措置であることを理解いただきたい。
 追加した7府県については、新規感染者数、病床の利用率などいわゆるステージ4(爆発的感染拡大)に相当する指標が多いこと、大都市で人口が集中しており、全国に感染が広がる前に対策を講じる必要があること。こうした要素に基づいて、専門家の意見をうかがって判断した。
 対策の内容は、前回と同じく飲食店の午後8時までの時間短縮、テレワークによる出勤者数7割減、特に午後8時以降の不要不急の外出自粛、スポーツ観戦やコンサートなどの入場制限の4つ。今回の対象になる地域以外にも、ステージ4に向けて感染が拡大している地域については、緊急事態宣言に準じる措置として飲食店の時間短縮など同じ4つの対策を講じる場合には、国として宣言対象地域と同じ支援を行う。タイミングを逸することなく、効果的な措置を講じていく。

◆対象地域の追加「全国への感染拡大を防ぐため」

 緊急事態宣言は法律に基づいて幅広い措置をとるものであり、感染対策を徹底する強力な手段だ。一方で皆さんの生活を大きく制約するものであり、政権として発出するのか、いつ発出をするかは最善の判断をする必要があると考えている。
 (昨年)12月31日に東京都の感染者数が1300人となった。この数字を見て、私はより強力な措置が避けられないと考えた。専門家からも緊急事態宣言を発出する時期に至ったとの提言をいただいた。強い措置を一挙に講じることで、何としても感染拡大を食い止めるため1都3県を対象に緊急事態宣言を決定した。今回は全国への感染拡大を防ぐために対象地域を追加する。
 感染リスクが最も高いと言われている飲食については、午後8時までの飲食店の時間短縮を要請する。不要不急の外出については飲食店が閉まる午後8時以降だけでなく、日中も控えるようお願いする。昼間の時間帯や午後8時までについても酒を飲んで大きな声を出す、距離を取らずに座るなど、感染リスクの高い飲食を避けていただきたい。

◆コロナワクチン、各自治体で準備へ

 今回追加された府県を含めて政府と各都府県との連絡会議を新たに設ける。会議の議論を通じて、都道府県には地域の実情を踏まえた対策を実行していただくとともに、国は最大限必要な支援を行う。
 医療体制の確保にも全力を挙げている。病床の確保を徹底的に進める。ワクチンはできる限り2月下旬までに接種開始できるよう、各自治体で会場の設定などの準備に入っており、国として接種の費用を全額負担し、全力で支援していく。
 水際対策について、年頭会見でビジネストラックに合意している相手国・地域内で変異株が発見された際は、即時運用を停止する方針を表明した。同時に入国に対しての検査も強化し、水際からの感染拡大防止に万全の対策を講じてきた。

◆水際強化「あらゆるリスクを予防的に取り除くため」

 しかし、直近では英国からの帰国者によるクラスターで変異株が確認された事例、ブラジルからの帰国者で新たな変異株が確認された事例が相次ぎ、国民の不安がさらに高まっている現状を大変重く受け止めている。国民の命と暮らしを守る、あらゆるリスクを予防的に取り除くためにビジネストラックなどは緊急事態宣言が発令されている間、一時停止する。今後速やかに相手国と調整を完了し、11カ国・地域からの新規入国を一時的に停止する。
 対象期間の2月7日までの間、徹底して行動を見直していただきたい。特に30代以下の若者の感染者が増えている。多くの方は無症状や軽症だが、若者の外出や飲食により知らず知らずのうちに感染を広げている現実がある。今の状況を長引かせないために国民、国、自治体が同じ方向に向かって制約のある生活を乗り越えていかなければならない。あらゆる方策を尽くして国民の命と暮らしを守る。ぜひ皆さんにいま1度の協力をお願いする。


【質疑応答】

 記者(幹事社・時事通信) 緊急事態宣言の対象拡大について、首相は7日の記者会見では「そうした状況にはない」と発言していた。結果的に見通しが甘かったのではないか。
 首相 先週の段階では、大阪の感染者が急増したのは直前のことであり、専門家も「よく原因を分析すべきだ」という評価だった。今回対象とした地域については、新規感染者数や病床の利用率が、いわゆるステージ4に相当する指標が多いこと、人口が集中して全国に感染が広がるリスクがあることなどに基づいて判断した。
 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長 東京の場合は、(昨年)12月に入ると徐々に感染が拡大してきた。大阪は昨年末までは下降の傾向を示していて、10万人当たりの指標を超えたのは、年が明けて(から)だった。

◆東京五輪・パラで「判断遅れてない」

 記者(幹事社・テレビ東京)外国人ビジネス関係者の入国を全面停止する理由は。東京五輪・パラリンピックを意識して判断が遅れたとの指摘もある。
 首相 東京五輪・パラリンピック(の関連)で判断が遅れたということはない。最近では英国からの帰国者で変異株が確認された事例、ブラジルからの帰国者で新たな変異株が確認された事例が相次いだ。

◆国と自治体の一体感、一時は必ずしもなかった

 記者(NHK) 国民の自粛疲れや(新型コロナへの)慣れにはどのように取り組んでいくか。
 首相 3回目の感染拡大で、国民には慣れや疲れがあると思っている。しかし、今回は大都市圏を中心に過去最高水準の感染拡大が続いている。何としても減少の方向に持っていかなければならない。
 尾身氏 国民の「自粛疲れ」ということで、なかなか協力が得られなかった。一時、国と自治体の一体感が必ずしもなかったというようなこともあったと思う。

◆感染症法の改正で「実効性上げる」

 記者(中国新聞) 厚生労働省が、保健所の調査への回答を拒否したり、虚偽の回答をした人への罰則を検討している。
 首相 新規陽性者の行動を調査し、濃厚接触者を特定して対策を講じることが重要。現場からは、調査に協力いただけないケースが増えていると報告を受けている。調査が実効性を上げることができるよう、感染症法の改正を検討している。
 記者(米ブルームバーグ通信) 米国のように1日に万単位の感染者が出る国とは水準が違うのに、国内では医療崩壊の可能性が指摘されている。根本的に医療制度や体制に問題があるのか。改革に取り組む考えは。
 首相 国によって医療提供体制の状況は違う。わが国ではコロナ対応の医療機関は、通常診療を行いながらコロナのための診療をしている。国と都道府県が連携し、地域のあらゆる医療資源を総動員してコロナ対応の病床を確保していくことが大事だ。

◆首相が評価した大阪で再発令、「当時は午後9時までの短縮だった」

 記者(毎日新聞) 営業時間の短縮要請の効果を首相が評価していた大阪府で宣言再発令になった。飲食店の時短要請で対策は十分か。休業要請などのより強い措置を取る考えは。
 首相 今回は徹底的に対象を絞り、効果のあるものを行う。大阪府は当時は午後9時までの時間短縮だった。今回は午後8時までの短縮と同時に、テレワーク7割など4つの対策をお願いするので、効果は必ず出てくる。
 記者(産経新聞) 北朝鮮の朝鮮労働党が党大会を開き、総書記になった金正恩(キム・ジョンウン)氏が核戦力を強化すると強調した。条件を付けずに対話を呼び掛ける姿勢は維持するか。
 首相 条件を付けずに金正恩委員長と直接向き合う決意だ。拉致・核・ミサイルといった諸懸案を包括的に解決し、北朝鮮と国交正常化を目指す考えに変わりない。あらゆるチャンスを逃すことなくと思っている。

◆医療法の改正「必要であれば」

 記者(日本ビデオニュース)医療体制は法制度で変えられる。国会で医療法と感染症法を改正するつもりはあるか。
 首相 今の法律の中で逼迫(ひっぱく)状況にならないように民間病院への働き掛けはずっと行っている。感染症法は改正する。医療法はもう一度検証していく必要があり、必要であれば改正するのは当然だ。

 【首相会見の流れ】

 菅首相の冒頭発言後、内閣記者会の幹事2社(各社の持ち回り制)が順に代表質問した。その後、司会の山田真貴子内閣広報官が挙手した記者の中から指名。本紙記者は指名されなかった。幹事社を含め8人が質問した後、挙手する記者がいる中、「次の日程」を理由に41分で打ち切った。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会・尾身茂会長も同席した。