https://www.kahoku.co.jp/editorial/20201129_01.html
菅義偉政権の発足から2カ月以上が過ぎた。日本国憲法をどう捉えているのか。メッセージは伝わってこない。
安倍晋三前首相は「改憲ありき」の前のめりの姿勢で手続きを進めようとして、国民の理解を得られずに念願を果たせなかった。
菅首相は所信表明演説で、「与野党の枠を超えて建設的議論を行い、国民的議論につなげたい」と憲法に触れた。
ただ、温室効果ガスの排出量をゼロにする宣言に比べて、淡々と原稿を読み流した印象だ。
「仕事をする内閣」を掲げ、携帯電話料金の引き下げなど目の前の課題を優先しているように見える。
世界の国々が新型コロナウイルス封じを急いでいるさなか、いまは国内の政治対立を招くテーマを議論する時とは思えない。
国民が何を求めているかを察知し、前政権と一線を画した冷静な対応を望みたい。
安倍前首相がこだわったのは9条の改正だった。2017年の憲法記念日に行われた改憲派集会に自衛隊を明記するメッセージを寄せた。
戦力不保持などをうたった1項と2項を維持した上で、9条の2を新設して「自衛隊を保持する」と書き込む内容だった。
自民党は自衛隊明記や緊急事態条項を含めた改憲4項目をまとめ、野党側に示した。しかし、かえって態度を硬化させることとなる。
粗削りな手法で溝を深めた形だが、菅首相もまた、最近の国会答弁で不可思議な引用をしている。
日本学術会議の会員候補6人を任命しなかった根拠を問われ、「公務員の選定と罷免は国民固有の権利」と定める憲法15条を持ち出した。
学術会議の会員は特別職の国家公務員だから内閣は任命権を持つという。
会員の選考と任命は日本学術会議法に規定されている。個別法を超えて、理念をうたう憲法に論拠を求めるのは飛躍しすぎという批判もある。菅氏がどれだけ憲法に通じているかは不明のままだ。
与野党が相まみえる衆院の憲法審査会は今月、菅政権になって初めて開催され、審議入りした。
改憲手続きを定める国民投票法の改正をテーマにするが、主張の隔たりは大きく、今国会でまとめるのは難しい。
対立の続く中、自民党は自衛隊明記などを具体化させる「原案起草委員会」を見切り発車させた。
条文案に近づける強引な方針には、野党だけでなく自民党内からも「暴走気味」と異論が出された。
起草委を水面下の秘密会として沈静化を図ったものの、数の力で押し切ろうという勢力は現存する。
分断を生んだ負の遺産を引き継いではならない。国民の合意形成に基づくという原点に立ち返るべきだ。
菅義偉政権の発足から2カ月以上が過ぎた。日本国憲法をどう捉えているのか。メッセージは伝わってこない。
安倍晋三前首相は「改憲ありき」の前のめりの姿勢で手続きを進めようとして、国民の理解を得られずに念願を果たせなかった。
菅首相は所信表明演説で、「与野党の枠を超えて建設的議論を行い、国民的議論につなげたい」と憲法に触れた。
ただ、温室効果ガスの排出量をゼロにする宣言に比べて、淡々と原稿を読み流した印象だ。
「仕事をする内閣」を掲げ、携帯電話料金の引き下げなど目の前の課題を優先しているように見える。
世界の国々が新型コロナウイルス封じを急いでいるさなか、いまは国内の政治対立を招くテーマを議論する時とは思えない。
国民が何を求めているかを察知し、前政権と一線を画した冷静な対応を望みたい。
安倍前首相がこだわったのは9条の改正だった。2017年の憲法記念日に行われた改憲派集会に自衛隊を明記するメッセージを寄せた。
戦力不保持などをうたった1項と2項を維持した上で、9条の2を新設して「自衛隊を保持する」と書き込む内容だった。
自民党は自衛隊明記や緊急事態条項を含めた改憲4項目をまとめ、野党側に示した。しかし、かえって態度を硬化させることとなる。
粗削りな手法で溝を深めた形だが、菅首相もまた、最近の国会答弁で不可思議な引用をしている。
日本学術会議の会員候補6人を任命しなかった根拠を問われ、「公務員の選定と罷免は国民固有の権利」と定める憲法15条を持ち出した。
学術会議の会員は特別職の国家公務員だから内閣は任命権を持つという。
会員の選考と任命は日本学術会議法に規定されている。個別法を超えて、理念をうたう憲法に論拠を求めるのは飛躍しすぎという批判もある。菅氏がどれだけ憲法に通じているかは不明のままだ。
与野党が相まみえる衆院の憲法審査会は今月、菅政権になって初めて開催され、審議入りした。
改憲手続きを定める国民投票法の改正をテーマにするが、主張の隔たりは大きく、今国会でまとめるのは難しい。
対立の続く中、自民党は自衛隊明記などを具体化させる「原案起草委員会」を見切り発車させた。
条文案に近づける強引な方針には、野党だけでなく自民党内からも「暴走気味」と異論が出された。
起草委を水面下の秘密会として沈静化を図ったものの、数の力で押し切ろうという勢力は現存する。
分断を生んだ負の遺産を引き継いではならない。国民の合意形成に基づくという原点に立ち返るべきだ。
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