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仮放免中のネパール人男性。支援者宅の近くで川を眺めながら一日が過ぎるという=長崎県大村市

 新型コロナウイルス対策で「密」を避けるために、出入国在留管理庁の収容施設から、外国人が一時的に解放される「仮放免」が急増している。だが外に出ても就労は禁じられ、行政の援助も受けられないため、多くの外国人が路頭に迷っている。「行き場」がなければ、彼らは―。

 「野垂れ死にしろとでも言われているようだ」。長崎県大村市の支援者宅に身を寄せるネパール人男性(39)はつぶやいた。

 6年の収容生活を送った大村入国管理センター(同市)を4月に仮放免されて半年。関西の支援施設を頼ろうとしたが入居者の1人が熱を出したため、コロナの感染を恐れて断念した。最後に頼ったのが収容中に面会で知り合った大村市の支援者だった。

 収入はない。日本に身寄りはなく、海外に住む家族からの仕送りが命綱。「カップ麺一つで一日を過ごすこともある」という。

 入管庁によると、施設内の「3密」回避を理由に仮放免を運用し始めたのは、男性が施設を出た4月から。同月の仮放免件数は全国で563件と、昨年1年間(1777件)の3分の1近くに達した。

 その後のデータは公表していないものの、5月には感染防止を目的にした仮放免の運用マニュアルも作成しており、件数は増え続けているとみられる。一時、100人を超えた大村入国管理センターの収容者数は10月末時点で37人に激減している。

 男性には帰国できない理由がある。内戦が続いた母国で学生時代に現政権を批判する運動を行った。「帰国したらどうなるか分からない。怖いです よ」。収容前に留学ビザが切れ、日本に難民申請をしたが認められなかった。仮放免は一定期間ごとに再延長される仕組みで「いつかは再収容されるかもしれない」と不安を抱えながら暮らしている。

 国が恣意(しい)的に運用する仮放免だが、施設を出ても在留資格を失ったままでは就労できず、国民健康保険にも加入できない。男性は同センターで知り合い、同じ時期に仮放免された元収容者と連絡を取り合っている。「お金に困っている」「住む場所がない」と助けを求められるが、今は自分が生きることで手いっぱいだ。

 仮放免後の外国人の状況をどう見るか。入管庁は「家族や支援者の有無など施設外の生活能力も考慮して仮放免を判断している。生活に困ることはそうないはず」との立場だ。

 日弁連の人権擁護委員会入国管理問題検討プロジェクトチームで座長を務める丸山由紀弁護士は「感染防止は評価できるが、収容する側の都合で仮放免 が運用されるのは問題がある。生存権を脅かさないため、仮放免後もある程度は就労を認める必要があるのではないか」と指摘している。

 (西田昌矢)

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