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 菅義偉政権が発足して初の本格論戦の場となる臨時国会が、あす召集される。

 安倍晋三前政権以来、政府・与党が憲法に基づく野党からの臨時国会の召集要求を無視し続けたため、議論しないまま積み残しになっている課題も多い。

 しかも、菅首相の所信表明演説は就任から40日後となり、ここまで遅れるのは異例だ。国会軽視と言われても仕方あるまい。

 与野党とも、この間の空白を埋める充実した審議に努めなければならない。

 喫緊の焦点は新型コロナウイルスへの対応だ。

 全国的に感染の収束が見通せないばかりか、道内では「第3波」の兆しも現れている。

 経済活動を重視する首相は観光支援事業「Go To トラベル」に続き、イベントの入場規制緩和などを推し進める。

 だが、経済再生は万全な感染対策が前提だ。これまでの対処に足りない点がないか、検証が欠かせない。その上で、休業補償を義務化する特措法改正などの必要な法整備を急がなければならない。

 首相が日本学術会議の会員候補6人の任命を拒否した問題は徹底究明が必要だ。

 憲法の保障する学問の自由を脅かすとの批判に対し、首相は拒否理由を明確にせず「総合的、俯瞰(ふかん)的に判断した」と繰り返す。

 長く首相だった安倍氏がはぐらかしや強弁を重ねて国会審議を不毛にした。菅氏も同様の答弁を続ければ、国民の不信を買おう。

 そもそも任命拒否は違法の疑いがある。まず撤回するのが筋だろう。組織のあり方に疑問があるなら、国会で議論すればいい。

 森友学園問題は、自殺した近畿財務局職員が改ざんの経緯を記録したファイルを巡り、その存在を認めた元上司の音声データが明らかになった。

 政府はファイルを開示すべきだ。加計学園や桜を見る会の疑惑も全容解明にはほど遠い。併せて再調査する必要がある。

 野党側は旧立憲民主党と旧国民民主党などが合流した新しい立憲民主党が誕生した。一方、合流しなかった国民民主党は立憲などとの統一会派からの離脱を決めた。

 野党勢力が細切れになっては、巨大な与党に支えられた政府に太刀打ちできまい。

 質問で役割分担をするなど、引き続き連携して論戦に臨んでもらいたい。国会に緊張感を取り戻す責任は野党にもある。