https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20200812/KT200811ETI090006000.php

 新型コロナウイルスの国内感染者が、クルーズ船の乗客乗員も含めて累計で5万人を超えた。特に7月に入ってペースが加速し、8月10日までの1週間だけで約1万人増えている。

 重症者も死者も増加傾向だ。冬のインフルエンザ流行期と重なると、複合感染や診療の混乱が心配される。今のうちに再拡大の波を抑え込まねばならない。

 国内で確認されたウイルスのゲノム(全遺伝情報)の分析で、3月以降に欧州から入ったウイルスの一部が変異し、6月中旬から広がったと判明している。

 当初は、大都市の接待を伴う飲食店で若者が感染する傾向が強かった。地方へ、中高年層へ、職場や家庭へと広がっている。

 ウイルスがより日常の中へ入り込んできていると考えた方がいい。医療体制の逼迫(ひっぱく)が現実味を帯びる地域も出ている。

 気になるのは地方への広がりだ。中でも沖縄県が著しい。

 5日まで1週間の人口10万人当たりの新規感染者数30・21人は、東京の倍に近く、国の指標で「爆発的感染拡大」を示すステージ4に該当している。

 さらに10日までの1週間で感染者の累計が倍増し、1100人を超えた。同日は宮古島で初めて死者が出る事態も起きている。

 県は独自の緊急事態宣言を発令。重症者の治療体制を優先させるためPCR検査の対象者も絞るなどの対応に乗りだしている。

 本土とは距離がある。人手や物資の不足が心配だ。国の積極的な関与が必要ではないか。

 菅義偉官房長官は3日の記者会見で、軽症者らが療養する宿泊施設の確保を巡って「沖縄県は十分でない。政府から何回となく促している」などと述べている。

 「GoToトラベル」で人の移動を促しておきながら、責任を押しつけるかのような発言だ。国として感染防止に本気で取り組もうとしているのか疑う。

 地方の中でも離島や山間地は、医療体制が整っていない。集団感染が起きると致命的だ。各自治体とも危機感は強く、慎重な行動を呼び掛けている。国はそれに応えねばならない。

 重症者や死者は今のところ、春の流行よりも少ない。ある程度の感染は仕方がないとの空気が生まれると、さらなる拡大を許し、医療が脆弱(ぜいじゃく)な地域へしわ寄せが来てしまう。

 国民に向けて感染防止の強い決意と行動計画を示す。それこそが今、国に求められている。