https://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201912/CK2019120702000149.html

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 現役時代に比べて賃金が大幅に下がった六十~六十四歳の高齢者に穴埋めとして支給する「高年齢雇用継続給付」を、政府が段階的に廃止する方針であ ることが六日、分かった。現在の給付水準を二〇二五年度に六十歳になる人から半減させ、三〇年度以降六十歳になる人から廃止する。主に現在五十四歳の人か ら半減が始まる計算になる。六十五歳までの継続雇用が二五年度から完全義務化されるため、企業が自力で対応し賃金水準を確保すべきだと判断した。

 現状では六十歳を超えると賃金が大幅に下がる人が多い。一八年の厚生労働省調査では、六十~六十四歳の賃金は五十五~五十九歳の75%程度。働き 方改革で、非正規労働者と正社員の不合理な待遇格差を認めない「同一労働同一賃金」が二〇年度から順次始まることもあり、企業は人件費増への対応を迫られ る。

 同給付は高齢者雇用促進のため一九九五年に創設。六十歳を超えて給料が急減した場合に補う役割を果たしている。継続して働く六十~六十四歳の賃金 が六十歳時点に比べて75%未満の場合、原則として月給の最大15%が雇用保険から支給される。別の企業に就職した場合も同様に給付を受け取れる。現在は 対象の月に支払われた賃金が約三十六万三千円以上の場合、支給されない。一八年度の申請処理件数は延べ約三百四十万件(一人で複数回受給可能)。支給総額 は約千七百六十九億円だった。新たに受給を始めたのは約十七万人だった。

 だが、給料の穴埋めに失業者用の雇用保険を使うことが疑問視されている。労働政策審議会の専門部会は〇七年に「一二年度までの措置とすべきだ」と結論付けたが、一二年に「高齢者雇用促進に重要な役割を果たしている」と継続へ転換。その後も断続的に議論が続いていた。

 厚労省は来年の通常国会に雇用保険法改正案の提出を目指す。

<高齢者雇用> 高年齢者雇用安定法によると、定年制度は60歳を下回ることができない。(1)制度の廃止(2)定年延長(3)継続雇用制度の導入 -のいずれかで、希望者全員を65歳まで雇用するよう、同法は企業に義務付けている。65歳までの雇用の義務化は2013年度から年金受給開始年齢の引き 上げに伴い段階的に始まり、25年度に完全義務化となる。政府はさらに70歳までの就労機会確保を企業の努力義務とする方針。18年の15歳以上の就業者 は6664万人で、65歳以上は862万人だった。