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 地元自治体が中止を要請する中、米空軍が嘉手納基地でパラシュート降下訓練を29日に強行した。基地周辺には学校や住宅が密集しており一歩間違えば重大事故につながりかねない。政府は毅然(きぜん)とした態度で米国に抗議すべきだ。

 パラシュート降下訓練は1996年の日米特別行動委員会(SACO)最終報告によって、米軍伊江島補助飛行場で実施することが合意されている。その後、2007年の日米合同委員会で例外的な場合に限り嘉手納基地を使用すると追加合意された。
 だが嘉手納基地での訓練は今年に入り既に4回を数える。今や「例外」どころか常態化の様相を呈している。日本を軽く見ているからこそ、米国は国同士の取り決めさえ守ろうとしないのだ。
 河野太郎防衛相によると、「例外的」と言えるような状況の説明さえ、米国からなされていないという。防衛省は「SACO合意に反する」として米国に中止を求めたが、無視された。これでは同盟国とは言えない。属国に対する扱いだ。
 この間、政府はあらゆる場面で米国に迎合し追従してきた。トランプ米大統領の求めに応じ米国製武器の大量購入を約束したのは象徴的だ。何でも言いなりになる政府の姿勢が今日の事態を招いたと言っていい。
 そもそも07年に嘉手納基地の使用を例外的に認めたことが大きな間違いだ。どのような場合が「例外」に当たるかは明らかにされていない。
 当時、政府関係者が基準として挙げたのは(1)非定期かつ小規模(2)人命に関わる(3)伊江島の気象条件―だった。
 今回は空軍が訓練をした同じ日に海兵隊が伊江島で降下訓練を実施しており、気象条件は理由にならない。
 米軍は、自分たちが「例外」と主張すればいつでも嘉手納基地で訓練ができると、都合良く解釈しているのだろう。日米合同委の合意は白紙に戻すしかない。
 嘉手納基地での降下訓練に先立って伊江島補助飛行場で実施された米海兵隊によるパラシュート訓練では、2人が提供区域外にある畑や県所有の伊江島空港に降下した。訓練は30日も行われ同空港に1人が降下する事態になった。
 伊江村では、訓練に伴い日常的に民間地への兵士の降下や物の落下、騒音に悩まされている。25日には米軍MC130J特殊作戦機から落下した部品が伊江島補助飛行場で見つかっていたことが明らかになった。嘉手納に兵士を降下させたのは同型機だ。
 SACOで合意されたからといって、住民を危険にさらすことは断じて許されない。伊江村民の大幅な負担軽減を図ることが急務だ。
 沖縄は全国の米軍専用施設面積の7割が集中している。パラシュート降下訓練まで押し付けられたのでは県民は安心して生活できない。全ての訓練の中止を求める。