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      トリチウム水の処分を巡り初めて開かれた公聴会=富岡町文化交流センター学びの森

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 東京電力福島第一原発の汚染水を浄化した後に残る放射性物質トリチウムを含んだ水の処分に関する初の公聴会は三十日、富岡町文化交流センター学びの森で開かれた。政府の小委員会は五つの処分方法を説明したが、漁業関係者ら十四人の発言は海洋放出に集中し「風評が起きるのは必至で、国民的議論もされていない」などと反対する意見が大多数を占めた。小委員会は三十一日にも公聴会を開き、処分方法を絞り込む議論に反映させる。
 小委員会事務局が各処分方法の概要などを説明した後、漁業関係者や地方議員、弁護士ら公募で選ばれた意見表明者が発言した。海洋放出に関しては十四人中、十二人が明確に反対の意思を示した。野崎哲県漁連会長(いわき市)は「本県漁業に壊滅的な打撃を与えるだけでなく、これまでの努力と再興意欲を完全に奪う」と語気を強めた。大槻宗司大阪大大学院工学研究科招へい教員(大阪府)は「これ以上のタンク保管は敷地面積的に難しいとの印象だ。トリチウム水の全量測定で安全性を確認した上で、海洋放出するべき」と賛成した。
 その他の「地層注入」「水蒸気放出」「水素放出」「地下埋設」の処分方法についても大半の意見表明者が反対意見を述べた。
 多核種除去設備(ALPS)の浄化水に他の放射性物質が残留し、一部が排水の法令基準値を上回っていたことが公聴会の開催決定後に判明したのに対し、事務局は「小委員会内では議論の前提となっていた。情報の出し方を工夫したい」と釈明した。だが、意見表明者からは「情報提供の仕方が恣意(しい)的だ」「トリチウムのみの処分に意見を述べる公聴会の基本前提が破綻した」などと疑問の声や批判が相次いだ。
 トリチウム水は原発構内のタンク約六百八十基に保管しており、計約九十二万トンに上る。タンク増設を進め二〇二〇年末までに総量を百三十七万トンに増やす計画だが、小委員会は「敷地内での増設は限界を迎えつつある」としている。
 初日の公聴会には一般聴講者約百人が訪れた。三十一日は午前九時半から郡山市の郡山商工会議所、午後三時半から東京都千代田区のイイノホールで開催される。