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余裕シャクシャク(C)日刊ゲンダイ

①野党の質問時間召し上げで悪魔政権は高笑い

 憲法53条に基づく野党の臨時国会召集要求を4カ月以上も放置し、特別国会の実質審議はわずか4日間。モリカケ疑惑を追及する野党の質問時間をまんまと奪い取った安倍政権は、もくろみ通りに国会を動かしている。「与党2割・野党8割」が慣例だった質問時間を「与党36%・野党64%」に変えたことで、前半戦だった28日までの衆院予算委員会では、与党の持ち時間はなれ合い質問の猿芝居が横行。会派乱立で分散した野党は時間切れの尻切れトンボが相次いだ。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。

「森友学園と財務省の交渉を収めた音声データの真偽をめぐり、自民議員が財務省を問いただし、太田理財局長にデータの存在を認めさせましたが、あの質問は野党が再度ぶつける予定をしていたもの。若手からの要望は口実に過ぎず、野党の機先を制する質問封じに利用したのはミエミエです」

 政府と与党が一体化した議院内閣制において、野党の質問時間召し上げは議会を通じた立法府による行政府の監視をなし崩しにするものだ。立正大名誉教授の金子勝氏(憲法)もこう言う。

「政府与党の方向性を野党がただす機会を失えば議会は儀式化し、国民が関心を失って政権批判も上がらなくなり、独裁がまかり通りかねない。そうなれば、民主主義は崩壊します」

 シナリオ通りの展開に悪魔政権は高笑いだ。


②ますますエスカレートする横暴政権の傍若無人

 安倍が言う「真摯な説明を丁寧に」が口先だけなのは周知だが、それにしてもデタラメが過ぎる。立憲民主党の川内博史議員がきのう、森友学園への国有地払い下げをめぐる会計検査院の疑義を取り上げ、「過去の答弁が適切でないなら真摯に対応していただけるか」と求めると、「私自身は財務省が法令にのっとって適切な価格で売買していることを信頼していると申し上げた。私が調べて、私が〈適切〉と申し上げたことはない」と論点ずらしの開き直り。

 初日の長妻昭立憲民主党代表代行への態度もメチャクチャだった。

 自民党の萩生田光一幹事長代行に対する野党の質問時間削減指示について問われるとイキリ立ち、「私からファクトを申し上げます。私は指示をしておりません」などとまくし立てて猛否定。参院幹事長が党役員連絡会で萩生田に「総理がこう言っていると言わない方がいい」とクギを刺したとの報道を材料に畳み掛けられると、「長妻さんは推測でものを言っておられる。思い込みでものを言われても建設的ではない」などとデマカセを繰り返した。

 推定無罪の原則を無視して「籠池さんは詐欺を働く人間」と断言する安倍をトップに担ぐこの政権にとって、ウソと強弁はお家芸だ。森友と財務省の音声データをめぐり、先週の衆院内閣委員会で確認を求めた野党議員に対し、菅官房長官は「事実のように決めつけて質問するべきでない」と声を荒らげ、「テレビの一方的な報道だと思う」と居直った。それが、3日後には事実認定されるなんてマンガだ。

 立憲主義を蹂躙し、国会やその後ろにいる国民をないがしろにすることが常態化している横暴政権の傍若無人はますますエスカレートしている。


  
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   河戸会計検査院長は安全運転に終始(C)日刊ゲンダイ

③寛容な保守、希望の正体

 モリカケ隠しの「国難突破解散」の混乱に乗じ、民進党に手を突っ込んだ小池都知事が産み落とした希望の党は、すっかり本性を現した。

 希望トップバッターで質問に立った長島昭久政調会長(写真)は「寛容な改革保守を標榜するわれわれは、イデオロギーや権力に対するルサンチマンで極論を振りかざして相手を叩けばいいという議論はしない」と切り出し、アベ自民にスリ寄り。先日の日米首脳会談で安倍政権の外交指針「自由で開かれたインド太平洋戦略」が議題に上ったことを持ち上げ、「日本で初めて使ったのは安倍総理。非常に感銘を受けた」などと絶賛した。安倍はさぞかし気分が良かったことだろう。

「あんな質問は論評に値しません。希望の党は与党でも野党でもない“ゆ党”であり、“第2自民党”であり、自民入りを狙う待機組だということがハッキリしました」(角谷浩一氏=前出)

 必死で親アベ勢力の一端をなすのが、希望の正体なのだ。


④籠池夫妻は保釈されないだろう

 安倍のアキレス腱であるモリカケ疑惑の核心は、アベ友だけが甘い汁を吸う露骨な利権構図だ。橋渡し役を担った昭恵夫人や、安倍が“腹心の友”と呼ぶ加計学園理事長の加計孝太郎氏らの国会招致を野党は重ねて求めたが、アベ自民は断固拒否。一方で、安倍の手のひら返しに反撃した森友学園の籠池夫妻は4カ月以上も拘置所生活を強いられている。弁護士による保釈申請は大阪地裁に却下された。

「籠池氏は非を認め、不正受給が疑われる補助金は返金した。関係書類は当局が押収済みで証拠隠滅の恐れもない。全国に顔が知れ渡って逃亡したくてもできない。それでも勾留が続くのは、権力に歯向かうと痛い目に遭うという見せしめでしょう」(司法関係者)

 特捜部案件は資料が膨大で、初公判まで1年を要するのは珍しくない。籠池夫妻は極寒の正月を迎えることになる。


⑤その気になればできる会計検査院への報復人事

 森友疑惑再燃の機運をつくった会計検査院の河戸光彦院長は財務、国交両省がゴミ撤去費用の積算根拠とした「地中ゴミの深さ」「ゴミ混入率」「処分費用単価」について、いずれも「確認できなかった」と答弁したものの、それ以上は踏み込まなかった。検査院は院長を含む3人の検査官が率い、国会、内閣、裁判所から独立した組織ではあるが、検査官は国会同意人事に縛られている。

 明大教授の西川伸一氏(政治学)はこう言う。

「検査官の任期は7年で、慣例で生え抜き、学者、監査法人出身者からひとりずつ選ばれ、国会同意人事を経て着任します。三権から独立しているとの建前ですが、中央合同庁舎内に拠点を構える霞が関ムラの一員でもある。組織の論理からいって、政権に対峙するのは容易ではないでしょう」

 人事の政治利用は安倍政権の常套手段だ。官邸は内閣人事局を通じて霞が関を牛耳り、日銀総裁やNHK会長に息のかかった人物を据え、トップダウンで意のままに操ってきた。

「安倍首相は集団的自衛権の行使容認を閣議決定する道筋づくりに外務省から小松一郎氏を引っ張り出し、内閣法制局長官に送り込んだ過去もある。数々の慣例を破ってきましたから、政権の都合で何が起きても不思議ではありません」(西川伸一氏=前出)

 身をていして安倍を守った佐川宣寿前理財局長は国税庁長官に出世、昭恵夫人に仕えた経産省の谷査恵子氏は在イタリア日本大使館の1等書記官に栄転した。露骨なほどに尽くせば褒美、歯向かえば報復が待っている。


⑥数は力の“ワルの天下”…行き着く先は翼賛会

 この国の民主主義は、もはや死に体だ。権力を監視するはずの大マスコミは圧力と抱き込みで牙を抜かれ、数の力を最大限利用するワルが天下を謳歌している。こんな国会があと4年も続いたらどうなるか。行き着く先は改憲翼賛会だ。

「野党の質問時間削減は、安倍首相の悲願である改憲への地ならしでしょう。野党の反発を封じ込め、衆参両院の3分の2以上の賛成で可決し、発議に持ち込めば最短60日で国民投票を実施できる。広報宣伝に規制がなく、費用は青天井ですから資金力のある自民党の独壇場になる。物量戦でテレビジャックすれば、CMも情報番組も朝から晩まで改憲賛成の一色に染まってしまいます」(金子勝氏=前出)

 国民投票は有効投票の過半数で承認とみなされてしまう。特別国会で見せつけられた絶望的な真実に向き合わなければ、取り返しがつかない。