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東芝、三菱重工が傾いても…“原発世迷い言”の暗愚の宰相 溝口敦の「斬り込み時評」
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2017年1月30日 溝口敦 ノンフィクション作家、ジャーナリスト 日刊ゲンダイ 文字お越し

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   27日、原発事業の縮小や大幅見直しを発表する東芝の綱川智社長ら(C)日刊ゲンダイ

 東芝は稼ぎ頭である半導体のフラッシュメモリー事業を3月末をメドに分社化し、外部の出資を仰いで2000億~3000億円の資本を調達する構えという。米原発子会社ウェスチングハウスの巨額損失約6800億円を穴埋めするため、優良事業の切り売りに入ったわけだ。

 ウェスチングハウスの損失が明らかになる前、東芝は17年3月期の連結純利益を1450億円と見込んでいたが、フタを開けてみればなんのことはない。負債が資産に倍する債務超過で瀕死の重症状態と分かった。

 ヘタをすれば東芝は原発に手を広げた咎めで倒産、解体しかねない。そしてもう1社、東芝と一緒に論じられることは少ないが、三菱重工も原発がたたって危うい状態に置かれている。

 同社はカリフォルニア州のサンオノフレ原発に蒸気発生器を納入していたが、12年に放射性物質を含む水が漏洩。同原発を運営する電力会社、南カリフォルニア・エジソン社など4社から約7000億円の損害賠償請求を受けている。

 しかも三菱重工は06年にフランスの原発会社アレバと提携し、中型の原子炉を共同開発してきたが、11年の東京電力福島第1原発事故で世界の原発をめぐる環境が一変、受注の取り消しや延期が広がった。そのためアレバは経営難に陥り、巨額赤字に苦しんでいる。

 アレバはフランス国営会社に近いが、ベトナムの原発計画が白紙撤回されるなど、環境は好転せず、仏政府としてはできるだけ負担を軽減したい。そのため提携関係にある三菱重工と日本原燃にアレバに対する約10%の出資を要請。出資額は400億~500億円に上るとみられるが、三菱重工はこれまでの行きがかりで断れない状態にある。

 原発に将来がないことは地震・津波国の日本ばかりではない。地盤が安定している外国にあっても、過酷事故対策や使用済み核燃料の処理問題など、いくつもの課題が解決のメドが立っていない。

 原発は当分の間、人間の手に負える技術ではあり得ず、廃炉という仮死状態に置くしかない。今後とも原発ブームは見込めず、三菱重工のアレバ出資は単にくれてやるだけの話になる。

 東芝、三菱重工といえば、日本の物づくりの基幹企業である。その2社が原発のために大きく屋台骨を傾けて、いいことは何もない。にもかかわらず暗愚の宰相安倍は「原子力利用を再びリードする」と世まい言を並べて、まるで福島の原発事故から学ぼうとしない。彼以上に世を害すること甚だしい政治家は、そうそういるものではなかろう。