http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/opinion/editorial/2-0061433.html

 巨費を投じながら問題続きの高速増殖炉「もんじゅ」のあり方を協議してきた、文部科学省の有識者検討会が、報告書をまとめた。
 もんじゅを運営する日本原子力研究開発機構は、原子力規制委員会から「必要な資質を有していない」と指摘されている。
 規制委は文科省に、同機構に代わる運営主体を具体的に示すよう求め、できない場合は廃炉を含め検討するよう勧告していた。
 にもかかわらず、報告書はもんじゅの新たな引き受け手を明示しなかった。かといって存廃にも言及していない。示したのは運営主体が備えるべき要件だけだ。
 規制委の勧告への回答とは到底いえない。
 もんじゅは国の核燃料サイクル計画の中核施設である。だが、核燃サイクル自体、行き詰まっているのが現実だ。
 新たな受け皿の見通しも立たない以上、文科省はもんじゅの廃炉に踏み込むべきだ。
 報告書は、もんじゅの運営について「全体的管理能力の不足」など数々の課題を指摘している。
 ところが、存廃論議は「政策的なもんじゅの位置付けを議論したものではない」と棚上げ。新たな運営主体が備えるべき要件として、自律的な保守管理、強力なガバナンスなど5項目を挙げた。
 安全確保の懸念が払拭(ふっしょく)されなければ「運転再開すら困難」とはしているものの、存続ありきと受け取られても仕方がないだろう。
 文科省は、機構からもんじゅの運転部門を分離して新たな法人を設立し、外部有識者が監督する案を検討しているという。これでは「看板の掛け替え」にすぎない。
 もんじゅは臨界翌年の1995年にナトリウム漏れ事故を起こして以来、トラブル続きだ。
 技術的な難しさもあり、国が新法人への参加を想定している電力会社も腰が引けている。
 1兆円以上の国費を投じ、現在も毎年200億円の維持費がかかるもんじゅをこれ以上、存続させる意味はあるのか。
 使用済み核燃料の再処理工場は操業のメドが立たず、再処理して取り出したプルトニウムを燃やすもんじゅも停止状態だ。
 核燃サイクルは事実上破綻している。
 日本が余剰プルトニウムを持つことへの国際的な懸念も大きい。
 文科省をはじめ政府に求められるのは、もんじゅを含む核燃サイクル全般を見直し、撤退する道筋を明確に描いていくことだろう。