http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/163228/1

http://static.nikkan-gendai.com/img/article/000/163/228/d4160a411f34298e1631f57f4a57dddf20150829141747133.jpg
会見でフォントの説明をする佐野氏(C)日刊ゲンダイ

 どこに「大きい日の丸」があるのだろうか。東京五輪のエンブレム問題で、大会組織委員会は28日、佐野研二郎氏(43)がコンペに提出したデザイン原案を初めて公表。使用差し止め訴訟を起こしたベルギーの劇場ロゴとの類似性を改めて否定したが、原案公表によって、新たな疑惑が浮上している。

 佐野氏本人が説明してきたエンブレムの「デザイン・コンセプト」が、原案には全くと言っていいほど、反映されていないのだ。

 5日の釈明会見でも、佐野氏はアルファベットの「T」のフォントから、1964年の東京五輪で亀倉雄策氏が制作したエンブレムの「大きい日の丸」を落とし込むという独自の着眼点を強調。ベルギーの劇場ロゴとは「デザインに対する考えが全く違うので、全く似ていない」と訴えた。

 確かに完成形は、向かって左上と右下のパーツが弧を描いているため、大きな白い円が全体を覆っているように見えるが、原案を見ると……。

「ちっとも“大きい日の丸″は浮かんできませんよね。今回の組織委の弁解も、『原案には似ているデザインが見つかったため、修正をお願いしたら、今度は別のデザインと似ていた』と言っているようなもの。ますますオリジナリティーに疑念を抱かせるだけです。そもそも言葉に頼らないのがデザインの本質。これ以上、能書きを垂れるのはやめた方がいい」(大阪芸大教授の純丘曜彰氏=芸術計画学科)

 コンペ後のデザイン修正で、コンセプトまで変えられるのだとしたら、コンペ自体の意義が失われる。実際、五輪エンブレムの審査委員の1人は、「審査で選んだのは原案」として、現在のエンブレムの承認を拒否しているという。