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 県は、名護市辺野古で進む新基地建設をめぐり、仲井真弘多前知事の埋め立て承認の手続きを検証した第三者委員会の報告書と議事録を公開した。

 131ページの報告書から見えてくるのは、そもそも公有水面埋立法の要件を満たしていない申請書を提出した沖縄防衛局、その申請を実質的な中身に踏み込まず形式的な審査にとどめた県、疑念の残る審査結果を基に承認の判断を下した前知事、という構図だ。

 第三者委員会は(1)埋め立ての必要性(2)国土利用上の合理性(3)環境保全策(4)法律に基づく他の計画との整合性-の4項目で法的な瑕疵(かし)を指摘している。

 具体的な指摘の内容を見ると、なぜこのような国の言い分がまかり通ったのか、疑問を感じる箇所が幾つもある。

 例えば、国土利用上の合理性について、県は埋め立て地の用途から考えられる大気、水、生物など環境への影響の程度が、周辺区域の環境基準に照らして許容できる範囲内かを審査し、「適」と判断した。

 騒音に関しては「一部地域環境基準値相当を超過する予測」が示されているにもかかわらず、である。「普天間基地の現状も併せて考慮すれば『許容できる範囲にとどまっている』と判断される」と説明しているが、なぜ、辺野古近辺の現状と比較するのではなくわざわざ普天間飛行場を持ち出すのか。

 辺野古ありきの国の考え方に、審査する県側も絡め取られていたのではないか。

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 報告書は、事業者の環境保全上の対応が不十分だと批判した。

 提出された文書にある「海草藻場の一部が消失しても、周辺海域における海域生物の群集や共存の状況に大きな変化は生じないと予測される」との記載に対し、「周辺に藻場があるから埋め立てを実施しても問題ないとするものであり、事業者の環境保全への姿勢に疑問を抱かせる明らかな誤り」と断じた。

 埋め立て海域にジュゴンの食み跡がある事実を認識していながら「ジュゴンは辺野古地域を恒常的には利用していない」と評価していることも「当該水域の重要性やジュゴンの貴重性を理解していない」と指摘した。

 オスプレイ配備の記述が、環境影響評価(アセスメント)手続きの最終段階である評価書で初めて記載されたことも問題視した。

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 2013年12月の仲井真前知事の埋め立て承認に対し、県民には正当性を問う声が根強い。そのひと月前には県環境生活部から「申請書に示された環境保全策では懸念が払拭(ふっしょく)できない」とする見解が出ていたからだ。 

 県土木建築部長が東京で入院中の前知事に審査状況を説明した時点では、環境分野の審査は一部未了だった。その際に前知事から年内に判断するとの指示があり、4日後に前知事は承認した。

 年明けに控えた名護市選挙への影響を懸念して承認を急いだのか。県が審査を急いだ背景に、政治的な思惑を感じざるを得ない。