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 10代後半の子どもが緊急避難する施設「子どもシェルター」の開設を目的とした法人が7月に設立されるという。沖縄弁護士会と福祉関係者らが準備を進めている

 ▼成人年齢は20歳なのに児童養護施設は18歳で退所しなければならない矛盾。シェルターはそんな隙間を埋める取り組みで、大人の1人として早い実現を願う

 ▼生活や教育など社会は「子どもは親が守る」ことを前提とするが、守られない子どもも少なくない。幼稚園児から十数年の間、母親の恋人に性的虐待を受けていた女性は「母は知っていたと思う」と打ち明けた

 ▼幼いころ知らなかった行為の意味を成長と共に知った彼女は、家出や非行を繰り返した。母親らから逃れるためだが、補導した警察官をはじめ関わった大人は彼女を家に帰したという。「誰も私に『なぜ家出(非行)するのか』と聞かなかった」との言葉が重く突き刺さる ▼「親はなくとも子は育つ」とはよく聞く。「子どもはどうにか育つものだ」の意味で用いられる場合が多いが、元々は母親と死別した子どもが周囲の大人の支えと自分の力で成長することを指す

 ▼約250年前にできたことわざだと知るなら、いつの時代も親は子にとって唯一の存在ではない。周囲の大人がその事実を胸に刻めばシェルターはきっと多くの子を救う。(黒島美奈子)