http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/589490.html

 経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会が2030年の電源構成比率の検討を開始した。6月までの決定を目指すという。

 安倍晋三政権は電源構成の議論を先送りしたまま、エネルギー基本計画で原発を「重要なベースロード電源」と位置付け、再稼働を推進する姿勢を示した。

 一方、再生可能エネルギーの導入を最大限加速し、原発依存度を可能な限り低減させるとの方針も掲げている。

 これを本気で実現するつもりなら、電源構成比率で脱原発依存の目標を設定し、政府の意思を明確にする必要がある。

 しかし、政策決定の手法が福島第1原発事故の前と変わらず、脱依存への熱意はうかがえない。

 小委のメンバーには原発利用に前向きな識者が多い。

 焦点は、事故前の10年度に28・6%だった原発比率だが、議論が始まる前から、15~25%を軸に調整といった見通しが政府関係者の間で語られていた。

 「運転40年で廃炉」の原則を適用すると、現在48基の原発は30年には18基に減る。これに大間原発(青森県大間町)を含む建設中の2基を加えて試算した数値が下限の15%のようだ。

 大間原発は安全性に疑問が投げかけられ、函館市などが建設差し止めを求めて係争中だが、こうした事情は全く無視されている。

 25%に至っては、原則40年の運転期間を延長するばかりでなく、原発の建て替え、新増設まで視野に入ってくる。

 原発依存度を最大限引き下げる場合でも、40年ルールを順守した結果にすぎない。

 これでは、何もしなくても下がる依存度を、むしろ維持しようとする意図すら感じられる。

 有識者審議会を政策誘導の露払いに使うような旧態依然としたやり方は、信頼を損ねるだけだ。

 今回は、各電源別のコスト試算も行われる。

 昨年末、別の小委が原発へのさまざまな優遇策を検討課題とする中間整理をまとめた。

 これは裏を返せば、原発が支援抜きでは維持できない高コストな電源であることを物語っている。

 民主党政権は30年代の原発ゼロ目標を決めた際、討論型世論調査という新たな方法も取り入れ、民意をくみ上げる努力をした。

 電源構成比率の決定には、国民の合意が必要だ。政府は厳密なコスト試算を公表した上で、国民的な議論を実施するべきだ。