http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2014103102000133.html

 沖縄県知事選がきのう告示された。最大の争点は米軍普天間飛行場の「県内移設」の是非だが、この機会に、本土に住む私たちも、沖縄に米軍基地が集中している現実を、あらためて直視したい。
 仲井真弘多知事(75)の任期満了に伴うもので、十一月十六日に投開票される。三選を目指す仲井真氏に翁長雄志前那覇市長(64)、下地幹郎元郵政民営化担当相(53)、喜納昌吉元参院議員(66)が挑む構図である。
 最大の争点は普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古への「県内移設」を認めるか否かだ。
 仲井真氏は前回「県外」を公約しながら、県内容認に転じた。今回は「(市街地に囲まれた)普天間より、安全性は格段に高い」と辺野古移設推進の立場で臨む。
 これに対し、翁長氏は「あらゆる手段を尽くして辺野古に造らせない」と、県内阻止を掲げる。共産、社民両党など革新系の支援も受けるが、前回は仲井真陣営の選対本部長を務めた保守政治家だ。
 沖縄県知事選は、保守と革新が対決する構図が長く続き、保守分裂選挙は今回が初めてだ。
 在日米軍基地の約74%が集中する沖縄県に、普天間返還のためとはいえ、さらに米軍基地を新設することへの拒否感が、保守層にも浸透しつつあることを物語る。
 安倍内閣は、今年一月の名護市長選で辺野古移設に反対する稲嶺進氏が再選されても、県内移設を進める方針を崩そうとしない。
 そればかりか、八月に海底掘削調査を始めたり、今月二十四日には本体埋め立て工事の入札を公告するなど、県内移設を県知事選前に既成事実化しようとしている。
 菅義偉官房長官は九月の内閣改造で「沖縄基地負担軽減担当相」兼任となったが、県内移設の是非は「もう過去の問題だ」として、県知事選の結果に関係なく、移設作業を進める方針を強調する。
 しかし、民意を顧みない強硬姿勢で、重い基地負担に苦しむ県民の理解が得られるだろうか。
 普天間問題には移設の是非だけでなく、沖縄をめぐる問題が凝縮していると考えるべきだ。
 日米安全保障体制が日本の平和と安全に不可欠なら、負担は国民が等しく負うべきではないのか、負担の押し付けは沖縄県民に対する差別ではないのか、などだ。
 本土に住む私たちも、同じ日本国民として、沖縄県民の苦しみから目を背けてはならない。今回の知事選を、沖縄の現実をともに見つめ、考える機会としたい。
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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2014103102000127.html

 この問題はもう過ぎ去ったこと、終わったことなのだと言う人もいる。沖縄の普天間飛行場をどこに移設させるか、本当に名護市の辺野古沖でいいのか。そういう問題である▼きのう告示された沖縄県知事選の大きな焦点となる問題だが、菅義偉官房長官はこう言っていた。「この問題は過去のものだ。争点にはならない」。昨年末に沖縄の仲井真弘多(なかいまひろかず)知事は辺野古の埋め立てを承認した。それで区切りは付いたとの見解だ▼だが当の知事自身が「まさに今進行中の課題」と言っていた。仲井真氏を含め出馬した四人全員がきのうの第一声で辺野古の問題を取り上げた。過去のものとする官邸と、現在進行形のものとして向き合う沖縄の人々。このずれにこそ、問題の本質はあるのかもしれない▼過去を見れば、戦争中に「本土の捨て石」とされて県民の四人に一人が死に、戦後も「基地の島」とされてきた事実がある。未来に目を向ければ、辺野古の美しい海を我々の代でつぶしていいのか、次の世代に渡さなくていいのかという疑問がある▼過去から未来へと続く問い掛けに対して「過去の問題だから、争点にはならない」と言うのは、答えになっているのだろうか▼先日八十八歳で逝去したドイツの作家ジークフリート・レンツ氏はこんな言葉を残している。<過去は去り行かない。それは現在にあって、我々を試している>