http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2013-03-30/2013033001_04_0.html

全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)は29日、お金がなくて医療機関への受診が遅れ、亡くなった人が、2012年の1年間で58人(25都道府県)に上った、と発表しました。調査対象は歯科を除く加盟の病院・診療所657事業所。
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(写真)「痛恨の教訓を制度の改善に生かしたい」と話す長瀬事務局長ら=29日
 長瀬文雄事務局長は、「死亡事例は日本全体でみると、氷山の一角にすぎない」と強調します。同調査は今年で7回目。

 58人のうち男性が78%で、働き盛りの40~60歳代が81%を占めました。58人の半数近い45%が無保険(22人)と国民健康保険(国保)の資格証(4人)で、医療を受けるには窓口でいったん10割の負担が必要です。ぎりぎりまで我慢し受診が遅れました。国保の短期証を含め正規の保険証がない人が67%(39人)で、国民皆保険制度の危機的状況の広がりを示しています。

無職や非正規

 雇用形態では無職(失業を含む)と非正規雇用が72%を占めています。働き盛りの世代で無保険、国保資格証、有効期間が短い国保短期証の比率が高いのが特徴です。死因は67%が悪性腫瘍。多くは来院時にすでに治療困難な状態でした。バスの運転手をリストラされ、無職になった58歳の男性(短期保険証)は、妻のパート収入を入れて月15万円で生活。病院にかかれず、胃がんが進行していました。世帯構成では独居と高齢夫婦で34件。

 無保険に至った経過では、▽国保料が高すぎて退職時に国保に加入できなかった▽国保料の滞納で保険証が役所に「留め置き」され、本人は保険証がないと思っていた(50歳、無職)などの特徴がありました。
 救済制度としての国保減免制度(国保法44条、窓口負担の減免)の適用があったのは5%だけで、実際には機能していない実態も明らかに。受診後の医療費負担では、約9割が生活保護と無料低額診療事業(加盟319カ所で実施)で救済されました。

実態調査急げ

 長瀬氏は、「集まった事例は『社会的につくり出された早すぎる死』だ」と指摘。国への緊急の要望として、▽無保険者の実態調査とすべての国民へ保険証交付▽すべての自治体に対し、短期証、資格書の機械的な発行や留め置きを行わないよう指導する、など5点をあげました。

民医連が調査した死亡例

 男性、非正規雇用、67歳、肺がん、無保険
 警備会社の正社員でしたが66歳で臨時社員扱いとなり、社会保険を喪失。賃金は月約16万円に。国保には未加入。国保料が高くて支払えないため。出勤途中に呼吸が苦しくなり救急搬送。肺がんに肺炎を併発していました。緩和ケア病棟に入る待機中に死亡。
 男性、無職、49歳、急性呼吸不全、国保

 勤務先倒産で失業。雇用保険受給中だったため国保の減免受けられず。糖尿病の治療を中断していて巨大褥創(じょくそう)ができ入院。退院後また中断。救急で再入院。国保44条で医療費負担の減免を利用しつつ生活保護を受ける予定で申請しましたが、44条、生保とも死亡後に認められました。

 男性、非正規雇用、48歳、出血性ショック、無保険
 高校卒業後、派遣の仕事を転々。その間、組合健康保険に加入していました。北陸地方の工場で雇い止めに。無保険状態で中国地方の実家に帰りました。体調不良を母に訴え、休日夜間に救急来院して、3時間半後に死亡。