https://www.nishinippon.co.jp/item/n/790751/

 暴力団対策の今後にとって極めて重要な司法判断である。

 北九州市に拠点を置く特定危険指定暴力団工藤会の最高幹部2人に対し、福岡地裁が有罪判決を下した。殺人など4事件の事実認定に加え、量刑も総裁の野村悟被告は死刑、ナンバー2の田上不美夫被告は無期懲役と検察主張に沿った判断だった。

 判決によれば、罪状はいずれも一般市民を狙って組織的かつ周到に計画され、銃撃で1人を殺害し、3人に銃や刃物で命にも関わりかねないけがをさせたものだ。動機も、利権介入を拒否された、手術で担当の看護師に不満を抱いたなど、暴力団特有の理不尽さが際立つ。

 死刑適用の基準とされる「永山基準」は亡くなった被害者数を重視するが、悪質性や社会的影響なども考慮する。国際的には死刑廃止の潮流もあるとはいえ、日本に制度として存在する以上、今回の4事件の認定に立てば選択しうる結論だろう。

 この死刑判決が、工藤会に限らず暴力団に与えた衝撃は計り知れない。組織暴力壊滅の流れを加速させる好機である。

■組織の特異性を重視

 直接的な証拠はなくとも、組織内での絶対的立場を根拠に、トップを極刑に問うことができる-。判決で量刑以上に注目すべきなのは、両被告の事件への関与を具体的に示す証拠がない中、実行犯との共謀や指揮命令の存在を推認したことだ。

 判決は「(実行犯らに)指示できる上位者は両被告が想定される」「工藤会にとって重大なリスクがある犯行を組員が無断で起こすとは考えがたい」といった推論を積み重ねた検察側立証の大半を認めた。

 ピラミッド構造が厳密で、上位者が命じれば犯罪もいとわない暴力団の特異性を最大限重視した判断といえる。

 この判断が定着すれば、犯罪の黒幕として摘発が難しかった組織幹部の罪を問うことがより容易となる。捜査機関に新たな武器を与えることと同義だ。

 ただし、推論と推認を重ねる手法は冤罪(えんざい)の危険性とも背中合わせだ。その意味で、今回の判決は「もろ刃の剣」だと言わざるを得ない。被告側は控訴の意向を示している。上級審で改めて検討されるべき争点である。

 両被告の捜査は、福岡県警が全国の応援を得て進めた工藤会壊滅作戦の象徴だ。他の組織にも通用するかは議論もあろう。

■暴排機運さらに強く

 暴力団の中でも工藤会の凶暴性は際立つ。1992年の暴力団対策法施行後も暴排関係者や企業を狙った犯行を繰り返してきた。北九州市のイメージ低下に加え、企業誘致などの面でも支障となってきた。

 福岡県は2010年、暴力団に利益供与などをした企業を取り締まる全国初の暴力団排除条例を制定し、14年には県警の壊滅作戦が始まった。官民挙げた暴排運動も活発化している。

 組員離脱も進み、同市小倉北区にあった本部事務所は市税滞納で差し押さえられ、事件被害者への賠償目的で売却された。事務所は取り壊され、福祉の拠点化が予定されている。

 それでも道はまだ半ばだ。工藤会は依然、県内で200人超の構成員を擁し、市民の不安は完全に拭い切れてはいない。暴排の機運をさらに力強いものにしていかねばならない。県警には引き続き市民の安全確保に努めるとともに、工藤会の関与が疑われる未解決事件の捜査にも力を入れてほしい。

 何より欠かせないのは、暴力団から離脱した者の更生支援である。就労の受け入れなど民間が果たす役割も大きい。

 かつて暴力団を「必要悪」として紛争処理などで利用する市民もいた。そこから工藤会のような「絶対悪」も生まれた。

 今回の判決を、暴力団をはじめとする、あらゆる反社会的勢力と決別する契機ともしたい。