https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021082400116

 地方選として軽んじることはできない。

 立憲民主党推薦の山中竹春氏が初当選した横浜市長選である。菅義偉首相が全面支援した前国家公安委員長の小此木八郎氏は、約18万票の大差で沈んだ。

 小此木氏は閣僚を辞任し、くら替え出馬した。父親の故彦三郎衆院議員から引き継いだ地盤は強固で、組織力は優勢だった。

 政治家になる前に彦三郎氏の秘書を務めた菅首相は、横浜市内の選挙区選出だ。小此木氏は昨年の総裁選で選対本部長として首相を支えた。2人は盟友ともいえる関係である。告示前、小此木陣営は情勢を楽観視していたという。

 首相の地元の市長選で大差をつけられたのは、新型コロナウイルス対策などで政権への批判が広がったことが主因だ。

 政府が進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致の是非も焦点だった。現職の閣僚だった小此木氏が誘致中止を掲げ、菅首相がそれを支援する矛盾も、有権者には理解されなかったのではないか。

 自民党にとっては、4月の衆参3選挙や7月の東京都議選などに続く実質的な敗北となる。内閣支持率も低下傾向が続いている。菅政権が有権者の信頼を得ていないのは明らかだ。衆院選や党総裁選を前に、菅首相の求心力低下は避けられまい。

 菅首相はきのう、市長選の結果を受け、記者団に「謙虚に受け止める」と述べている。ただ、政府のコロナ対応が響いた可能性を認めつつも、野党が要求する臨時国会を開き説明責任を果たすのか、との質問には答えなかった。

 首相は有権者が批判する理由を理解しているのか。インド由来のデルタ株への対応が遅れ、世論を軽んじて東京五輪を強行した。病床が不足し、十分な医療を受けられないで自宅療養する人たちが急増している。

 政府はこれまでの政策を十分に検証せず、責任に向き合っていない。菅首相は記者会見や国会で質問に真正面から答えず、はぐらかす。今後も同じ姿勢を続けるのなら信頼は回復しないだろう。

 自民党の対応も問われる。9月末が任期の総裁選は、衆院選前に実施される可能性が高まっている。菅首相を含め、数人が出馬意欲を示している。

 これまでの政府対応を検証し、実効性のある政策論争によって選出されねばならない。昨年と同じように派閥力学を優先すれば、有権者と党の乖離(かいり)が進むだけだ。