https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021082500104

 新型コロナ第5波による感染爆発で医療が逼迫(ひっぱく)し余力をなくしつつある中、どれほどの効力があるのか。

 厚生労働省と東京都が、改正感染症法に基づき、都内全ての医療機関に、新型コロナ患者向けの病床確保などを要請した。約600床を上積みし、計7千床の確保を目指す。

 正当な理由がなく拒んだ場合は勧告し、従わなければ医療機関名が公表できる強い措置だ。国としての要請は初めてとなる。

 都はこれまでも感染拡大のたびに病床確保を求め、国も財政支援で後押ししてきた。

 思うように増えないのは、医師や看護師、医療機材の確保が伴わない事情がある。院内感染や風評被害が経営悪化につながると懸念する民間病院も少なくない。通常医療を含めて役割分担をしているのが実情だ。

 国や都が措置を強引に進めれば、信頼関係を損ないかねない。地域医療の事情をきちんと踏まえて、人材確保などで病院間の調整役を果たすべきだ。

 そもそも病床確保の要請で深刻な現状に対応し切れるのか。

 都内で療養中の感染者は4万人を超える。入院中は1割に満たない。確保病床は6割が埋まり、残りも他の病気の患者が使うなどで、すぐには空かない状況だ。

 療養先が決まらず調整中の人は1万人以上、自宅療養者は2万5千人に上る。救急搬送を依頼しても病院に受け入れを断られ、医療につながらないまま亡くなる事例が相次いでいる。

 都は、自宅療養中に呼吸が苦しくなって救急搬送された軽症者を一時受け入れる酸素ステーションを始動した。130床を設け医師や看護師が常駐するが、応急処置の場にすぎず、治療の場が増えるわけではない。

 要請で病床が確保できても、コロナ以外の患者の受け入れを制限することになり、地域の不安は高まるだけだ。

 臨時の医療施設を速やかに設ける時ではないか。

 感染症法は、知事の判断で設置を認めている。日本医師会の中川俊男会長も「集中的に医療を提供する場所の確保を」と、イベント会場や体育館、企業の宿泊研修施設の活用を求めた。

 人材の提供なら民間病院の協力も得られやすいだろう。間仕切りを使って全体を見渡せる配置ができれば管理もしやすい。

 国は、設置に向けた災害医療の専門人材の派遣や、財政支援に進んで乗り出すべきだ。