https://www.shinmai.co.jp/news/article/CNTS2021082600136

 東京電力福島第1原発にたまり続ける処理水の放出を巡って、政府と東電が具体策を固め始めた。

 海底に配管を通して原発の沖合約1キロで放出する、水産物の販売に風評被害が出た場合は国費で買い取る、といった内容である。

 海洋放出に反対してきた全国漁業協同組合連合会(全漁連)は政府方針を受け、「改めて断固反対」とのコメントを出した。

 安全性の担保、安心して漁業ができる方策の明確化など5項目を政府に申し入れてきたのに、回答がないと訴えている。

 政府と東電は2015年、地元漁業者らと「関係者の理解なしにいかなる処分もしない」と約束した。それなのに政府は今年4月、理解を得ぬまま放出を決めた。

 今回明らかになった具体策も、一方的な対応の延長線にあると受け取られても仕方ないだろう。

 影響を直接受ける漁業者の納得が不可欠なのは言うまでもない。理解の前提となる信頼関係の構築から改める必要がある。

 第1原発では今も、毎日約140トンの汚染水が発生している。技術的に除去できないトリチウム以外の放射性物質を浄化処理したものが、処理水と呼ばれる。

 保管するタンクで敷地が埋まってきており、来年秋にも満杯になるとの試算がある。早く処分しないと廃炉作業に支障が出るというのが、政府と東電の立場だ。

 トリチウムは他の原発も放出している。薄めれば人体への影響は少ないともされる。だから第1原発も―。政府と東電の対応にはそんな考え方が透ける。

 放出する沖合は漁業権の設定されていない海域であり、少しでも陸地から離れた方が不安を和らげられるとの狙いがある。

 第1原発の処理水は、他の原発とは違い過酷事故で溶け落ちた核燃料に触れた水だ。安全性への不安に丁寧に向き合わねば、風評被害は避けられないだろう。自立して漁業を営んでいけるかが問題であり、被害が出たら買い取れば済むというものでもない。

 政府はこれまで、処分方法について地元関係者の意見を聞く会を重ねて開いてきた。だが毎回、既に決めたことについて一方的に理解を求める面が強く、対話に結び付いてきたとは言い難い。

 「安全だ」と繰り返すだけでは解決しない。政策決定における透明性の確保や関係者との真摯(しんし)な対話を欠いていることが、問題の根幹にある。政府と東電は姿勢を見直すべきだ。