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 歯止めなき防衛予算の拡大は、どのような相手から誰を守るためのものか疑念ばかりが強い。理念なき装備の増強に強く反対する。

 防衛省は2022年度の概算要求で、過去最大となる5兆4千億円超を計上する方針を固めた。歴代政権が防衛費の目安としてきた国内総生産(GDP)の1%という枠を超える可能性もある。
 沖縄を含む南西諸島へのミサイル配備も含まれる。憲法9条に基づく専守防衛を逸脱するかのような防衛予算の在り方は認められない。
 国の借金である「長期債務残高」は21年3月末の時点で1千兆円を超す。単純計算で国民1人当たり約800万円の借金だ。防衛費だけ「聖域」扱いは許されない。
 ましてやコロナ禍で国民の多くが経済的に困窮している。防衛費増額が国民の理解を得られるはずがない。
 概算要求には陸上自衛隊勝連分屯地への地対艦ミサイル(SSM)配備が新たに加わった。SSMは現在射程約200キロとされる。防衛省は今後、改良を加え、25年度には射程約千キロの長射程ミサイルを開発するとしている。
 長射程ミサイルは、敵の攻撃が届かない場所からミサイルによって打撃を加えるものだ。既に奄美大島、宮古島にミサイル部隊が配備され、石垣島にも新設する計画がある。
 沖縄本島に配備するのは、宮古、石垣の前線が突破、破壊された場合、本島の部隊が迎え撃つという発想であろう。
 しかし日本の領海を越えて攻撃する可能性のある武器が、専守防衛といえるのか。
 同時に沖縄戦で得た教訓を忘れてはならない。基地、軍隊が駐留する場所は真っ先に攻撃対象となる。軍隊は住民を守るための存在ではない。
 沖縄へのミサイル配備は住民の存在を無視した机上の防衛論であり、有事となれば再び沖縄を惨禍に陥れるものでしかないのは明らかだ。
 防衛費増大の背景には台湾を巡る米中対立がある。4月に出された日米共同声明は、台湾海峡の平和と安定の重要性に言及し、日本は「自らの防衛力強化」を表明した。
 共同声明を念頭に岸信夫防衛相はGDP比1%枠にこだわらないと明言している。
 だが対中国を念頭に置いた安全保障策を強化するのであれば、まずは平和的外交による努力が必要だろう。尖閣諸島をはじめ海洋進出を図る中国に対するけん制であれば、軍備力増強は逆に緊張関係を強めるだけだ。
 安全保障法が成立後、長射程ミサイルだけでなく護衛艦の事実上の空母化など、自衛隊は防衛でなく攻撃重視の装備へと変化しつつある。
 さらには宇宙やサイバー空間など安全保障の領域は際限なく広がる。
 自衛隊に認められる「必要最小限度の自衛力」は、どのような部隊であり、装備なのか。政府は国民が納得できる防衛費の在り方を示すべきだ。
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防衛費増大しても、ウイルスには無力。