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 アフガニスタンからの拙速な米軍撤退は、米国の信頼を失墜させた。安全保障で米国を頼りにする国では不安が広がる。バイデン大統領=写真、ロイター・共同=は信頼回復に尽くさねばならない。
 米中枢同時テロから二十年にわたるアフガン戦争で、米国は莫大(ばくだい)なコストを払ってきた。米ワトソン国際公共問題研究所によると、米軍の戦死者は約二千四百人。警備業務などを請け負う民間軍事会社職員の死者はそれより多く三千八百人以上に及ぶ。
 戦費は負傷した退役兵士の治療費を含めて二兆二千六百十億ドル(約二百四十八兆七千億円)。日本政府の一般会計当初予算の二年分を超える額だ。
 ただし、最大の犠牲者はアフガンの民間人である。国連アフガニスタン支援団(UNAMA)が集計を始めた二〇〇九年から今年上半期までの民間人の死傷者は五万五千人を数える。
 こうしたあまたの犠牲はいったい何のためだったのだろうか。アフガンの混乱ぶりを見てこう思わざるを得ない。
 米中枢同時テロを受けて北大西洋条約機構(NATO)加盟の欧州諸国もアフガンに派兵し米国に協力した。ところが米国がNATO加盟国の慎重論を振り切って一方的に撤退を進めたことで同盟関係は損なわれた。
 これでは同盟関係を軽視したトランプ前大統領と同じである。アフガンを見捨てた米国への風当たりは強い。
 気が気でないのは、米国をあてにしているウクライナのような国だ。隣国ロシアと対立するウクライナに米国は軍事支援をしているが、プーチン・ロシア大統領の側近のパトルシェフ安全保障会議書記は「アフガンと同じことがウクライナの米国支持者にも起きるだろう」と冷や水を浴びせる。
 バイデン氏は対中国戦略を最重視し、自由主義陣営の結束を求めている。ならば各国と念入りに意見調整を図るべきだ。単独主義では困る。
 他国から寄せられる信頼は米国の財産であり大きな力だった。それをバイデン氏は台無しにした。地道な努力の積み重ねで取り戻すしかない。出直さねば。